定点観測

定点観測と云うのは、同じ景色を同じ撮影位置から、何年もその景色の春夏秋冬を撮り続ける.または考現学(最近はあまり耳にしませんが)で、例えば銀座の四丁目の交差点という固定された場所で、数年の渡り女性のファッションを観察し、過去から現在への移り変わりを調べるなどの学問を云います。

仕事に疲れたときに稲荷町の”veloche”にコーヒーを飲みに行きます。そんな時は、普段あまり吸わない煙草が吸いたくなり、2階の喫煙席に席を取ります。

窓ガラスに面したカウンター席がお気に入りの場所です。
目の前は稲荷町の交差点で、対角線上に地下鉄稲荷町駅の階段出口があります。

午後に行くことが多く、階段の出入り口を通る人は疏らです。コーヒーと煙草を楽しみながら、それらをボーッと眺めている時、「これって、定点観測だ」と思った次第です。

ここから映画の話です。定点観測をテーマにした(?)映画がありました。1995年に公開されたハーヴェイ・カイテルが主演で、香港のウェイン・ワンが監督した「スモーク」がそれです。

場所はニューヨクのブルックリン、街角の煙草屋の主人がハーヴェイ・カイテルです。毎朝、店の開店準備が終わると、三脚に取り付けたカメラを持ち出し、一枚写真を撮ります。写真は何千枚も撮られています。そのカメラはcanonのAE-1でした。

映画のストーリーにその写真が重要な役割を果たしますが、別にびっくりするようなシーンが写っているわけではありません。
ともかく、毎日毎日朝一枚だけ撮られた「街角の写真」を中心に物語は進んで行きます。カットバックが多用されており、話が何度も過去に戻ったりして、チョット解りにくいのですが、まさに「人生なんて、煙草の煙のようなもの」と言った、気張らず、でも交わされる会話は結構深い、粋な映画でした。

その続編が主役、監督が同じで、「ブルーインザスカイ」です。
マドンナが恋の郵便配達役で特別出演、ストーリーとは直接関係ないのですが、愛の歌を歌って、かわいくお尻を振りながら去っていくシーンはなかなかに良い場面でした。

大分古い映画なので記憶も曖昧でしたので、どうかな?と思いながらネットで情報を探すと、多くのファンがおいでのようで、情報が沢山ありました。

この映画を見た当時、「面白かったよ」と云っても、私の周辺で見た人はいませんでした。それが13年もたっても多くのファンがネット上で情報提供しているのです。
とても赤の他人とは思えません。お会いできましたら「スモーク」を肴に水割りでも飲みたいと思います。

兼好法師は徒然草の中で「ひとり、燈のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる。」と書いていますが、このような気持ちを云うのでしょうね。